マーママーマ、あるいは白川静『字通』の価値

数年来探し求めた、『字通』CD版の、入手の手立てがようやく取れた。これで『大漢和辞典』『学研漢和大字典』とならび、PC上で検索できるようになり、大幅に効率が上がると言える。もしあと揃えるとしたならば、『漢語大詞典』だけだろうが、今のところ必要を感じない。

そしてさらに、『字通』についても、かつてほどの必要は感じなくなった。その根柢には、白川漢字学への疑問が、学べば学ぶほど増えてきたことにある。その第一歩は、「この文字はこう見えた」という、だまし絵のような理屈しか無いことである。

ただ白川博士は、膨大な金石文(金物や石に鋳込まれ・刻まれた文字)を読んでいるから、その所説に説得力は無くとも、迫力はあった。しかし論語の研究を進めるにつれ、自分でも金石文に目を通すようになると、その威光はやや薄らいできたと言わざるを得ない。

決定的に「これはおかしい」と思ったのは、日本語の音だけで「音通する」と言ってしまう所。今日、言語の音を論じるには、IPAの習得が不可欠なのだが、『字通』その他にIPAは、まるで出てこない。多分、知らないままだったろう。これでは素人論と言われても仕方が無い

※でかでかと載ってた。なんで見落としたんだろう?

また、中国学を少しでも学んだ者なら、外国人の耳には同じに聞こえても、まるで意味の違う言葉になる、中国語の微妙さを知っているだろう。マーマーマーマ-マ。”母はあばたの馬を怒鳴るのですか?”日本語音で近いと言うだけで、意味まで同じと考えるのはとんでもない。

金比羅とチンピラを一緒にしては、香川の人が怒るだろう。

だがそれでもなお、研究には不可欠と思って入手することにした。あるいは今の私の、白川漢字学の理解が、非常に浅薄であると判明するかも知れない。それはそうなったで、喜ばしいことである。

それはそうと、『学研漢和大字典』も、新しいバージョンでソフトが出ないものか。需要が無いから見込み薄だが、現行のソフトは、藤堂音が引けない。JIS準拠のため、コピペすると文字化けする。それほど難しい事では無いだろうが、金にならぬとあってはやむを得ない。

勝手な要望だが、各漢字毎の藤堂音を表示するだけで無く、藤堂音で漢字が引けたら、素晴らしいことだと思う。藤堂音韻学は、後継者がいなくて滅びてしまったが、この機能がもし実現するなら、かつて日本にもこんなに程度の高い研究があったと、後世を利することになると思うが。

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