本日の改訂から

論語微子篇(11)要約:昔の隠者風味な賢者たちについて、孔子先生が論評します。その結論は”こいつらは身勝手にもほどがある”。あるいは隠者のまねをして、稽古や勉強をサボる弟子を、こう言って叱ったのかも知れません。


伯夷・叔斉は、殷周革命の際に周武王の革命軍の前でイヤガラセを大声で言い、官職を得ようとしたが、太公望に下心を見抜かれて失敗した、田舎出身のニート兄弟。やった事は街宣右翼と違わないし、中国では歴代、乞食を集めて騒ぐなど、同様の官職あさりはよく見られる。

叩馬諫曰、「父死不葬、爰及干戈、可謂孝乎。以臣弑君、可謂仁乎。」左右欲兵之。太公曰、「義士也。」扶而去之。

論語 伯夷叔斉
草むらに潜んでいた伯夷と叔斉が、武王の車の引き馬に飛び付いて言った。「父上が亡くなったのに葬式も出さない。代わりに戦争を始めた。親不孝にもほどがある。家臣の分際で主君を殺そうとしている。お前さんはろくでなしだ。」怒った衛兵が武器を向けた。

太公望「ハイハイご立派ご立派、ちょっとあっちへ行こうね。」衛兵に言い付けて、しがみついている二人を馬から引きはがし、「オイ! こいつらをどっかに捨ててこい。」

及餓且死,作歌。其辭曰:「登彼西山兮,采其薇矣。以暴易暴兮,不知其非矣。神農、虞、夏忽焉沒兮,我安適歸矣?于嗟徂兮,命之衰矣!」遂餓死於首陽山。

論語 史記
二人は餓えて死にそうになり、恨みがましい歌を作った。

西の山に登ってワラビを取って食った。
紂王も成り代わった武王も、ろくでなしだ。
我らのような賢者を食わせてくれた王様は、とうに死んじまった。
あーあ。腹が減って死にそうだ。

そのまま首陽山で飢え死にした。(『史記』伯夷伝3)

柳下恵は孔子が生まれる70年前に世を去った、カタブツで知られる魯国の家老。

魯人有獨處室者,鄰之釐婦亦獨處一室。夜,暴風雨至,釐婦室壞,趨而託焉,魯人閉戶而不納。釐婦自牖與之言:「子何不仁而不納我乎?」魯人曰:「吾聞男女*不六十不閒居。今子幼,吾亦幼,是以不敢納爾也。」婦人曰:「子何不如柳下惠然?嫗不逮門之女,國人不稱其亂。」魯人曰:「柳下惠則可,吾固不可。吾將以吾之不可、學柳下惠之可。」

孔子家語
魯に台風が来て、あるやもめの家が吹き飛んだ。女は隣家の独身男に「入れて下さい」と頼んだが、「あんたを入れたら国中から助平扱いされる」と断られた。

女「柳下恵さまは、一晩じゅう、年頃の娘を抱いて温めましたが、誰も怪しまなかったでしょう?」
男「俺は柳下恵さまじゃない。疑われるに決まっている。」(『孔子家語』好生6)。

鄭玄
「廢」(廃)は武内本が引く鄭本によって「発」の誤記とされ、下掲の通り”行動を発する”→”動く”と解せるようだが、デタラメばかり書く鄭玄は信用できない(→後漢というふざけた帝国)。「廃」の原義は矢を放つさま。詳細は論語語釈「廃」を参照。

廢中方肺反馬云棄也鄭作發動貎


本文「廃中」。注釈。廃は方-肺の半切の音である。馬融は”捨てる”の意だと書いている。鄭玄は「発」と書き改めている。”容貌を動かす”という意だとある。(『経典釋文』巻二十四17)


論語の本章は従来の解釈とは違って、孔子が存外、過去の「偉人」を冷徹に見ていたことを示す。「中庸の徳は、全く至れり尽くせりだ」(論語雍也篇29)と言った孔子は、何かへのこだわりや片寄りが、回り回って自分の損になる、と分かっている現実主義者だった。

だから「偉人」たちを片端から挙げつつも、”好き勝手なことを仕出かした者ども”と言ってのけたわけ。そもそも孔子が弟子に、隠者への道を勧めようものなら、弟子は逃げ出したに決まっている。仕官して貴族に成り上がりたいから、弟子は孔子のお説教を我慢して聞いたのだ。

従って上掲下村先生の従来訳は、存外本質を突いている。対して普段デタラメを書いている馬融は、半分だけ読み取りつつも、結論でやっぱりデタラメを書いている。

註馬融曰亦不必進亦不必退唯義所在也

馬融 東大応援団
馬融「可も無く不可も無くとは、仕官も隠居も、絶対にやらねばならないわけではない、との意だ。ただ一つ、”義”を守ればよいのだ。」(『論語集解義疏』)

どこぞの応援歌ではあるまいし、「ただ一つ」と言われても、「義」とは何かを説明しないから、何のことか分からない。孔子生前なら「義」とは、”筋が通っていること”の意でゆらぎがないが、後漢儒はもちろん、その時々に自分の都合のよいように解釈した。

ついでながら新注は、なぜか解釈を書かず、読者に投げている(『論語集注』)。

https://hayaron.kyukyodo.work/syokai/bisi/468.html

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