本日の改訂から

論語の本章は、もう少し膨らませた話を前漢初期の『韓詩外伝』が載せている。

子夏問曰:「關雎何以為國風始也?」孔子曰:「關雎至矣乎!夫關雎之人,仰則天,俯則地,幽幽冥冥,德之所藏,紛紛沸沸,道之所行,如神龍變化,斐斐文章。大哉!關雎之道也,萬物之所繫,群生之所懸命也,河洛出圖書,麟鳳翔乎郊,不由關雎之道,則關雎之事將奚由至矣哉!夫六經之策,皆歸論汲汲,蓋取之乎關雎,關雎之事大矣哉!馮馮翊翊,自東自西,自南自北,無思不服。子其勉強之,思服之,天地之間,生民之屬,王道之原,不外此矣。」子夏喟然嘆曰:「大哉!關雎乃天地之基也。」《詩》曰:「鍾鼓樂之。」

子夏 孔子
子夏「関雎の歌は、なぜ国風篇の始めに収められたのですか?」

孔子「関雎は素晴らしいなあ! 関雎の歌い手は、仰向けば天、うつむけば地で、ぼんやりもやもや、徳の仕舞いどころは、むらむらぐつぐつ、道の行ったあとは、神竜のように変化して、言葉の綾が美しい。スバラシイねえ! 関雎が道であることは、万物に関係があり、生物の命が関わる所だ。黄河や洛水が預言書を(神獣の背に乗せて)出し、目出度い麒麟や鳳凰が郊外を舞い踊ったが、もし関雎の道がなかったら、どうやって関雎の事が実現して今のようになっただろうか。そもそも儒教の六科目の教えでは、クドクドといろいろな説明をしたが、実はその根源は関雎にあるのだ。関雎とは偉大だねえ! 天下に満ちてしかも慎ましい。東西南北、関雎を思って慕わないものはいない。君は関雎に努力し、思って慕いなさい。天地の間、人々の属性、王道の原則は、関雎を離れては成立しない。」

子夏がため息をつき、「偉大ですねえ! 関雎が天地の根源であることは。『詩経』に”チンチンどんどんをしなさい”と言うのももっともだ。」(『韓詩外伝』巻五の1)

あまりに馬鹿げたことしか書いていないので、まじめに訳す気が失せかけた。

詩人という者は頭のねじが常人とはずいぶん違っているものだが、この子弟の対話は幼児と幼児のたわごとにしか読めない。関雎が性欲の遠回しな表現だから、だいたいの意味を想像することは出来るが、当たっているとは断じ得ないし、幼児が性欲を談じるのも如何わしい。

漢文にはたまにこういう、何が書いてあるかは分かっても、何を言いたいかさっぱり分からない文章がある。だが、それでいい。大人のくせに幼児に振る舞う𠮷外の𠮷外沙汰を、金になる精神科医でもないのに、なぜまともに考える必要があるのか。

分からないものにおかしな理屈を付けて、その解釈に従わせることで世間から金をむしってきた、歴代の儒者を愚劣と断じるからには、愚劣に付き合わない覚悟が必要だ。それは論語にべったりと貼り付けられた、後世の捏造を剝がすためには是非必要な精神でもある。

ともあれ「関雎」の文字は前漢初期にはあったが、論語の本章は定州竹簡論語に無いことから、成立は後漢以降にまで下ると見るべきだ。上記の通り、「関雎」の歌には後漢にならないと見られない文字がぞろぞろあり、前漢までの歌詞とまるで違えられた可能性が高い。

古注には前漢の孔安国が注を付けているが、この男は実在が疑わしい。新注は元の歌を引いて御託を並べているだけだし、大して難しくもないので、訳は略す。

古注『論語集解義疏』

註孔安國曰樂而不至淫哀而不至傷言其和也

孔安国
注釈。孔安国「楽しみてみだらに至らず、哀しみて傷つくに至らずとは、その調和を言ったものだ。」

なお「関雎」の語は論語では泰伯編にもみえるが、そちらは『史記』孔子世家に再録があるから、本章とは異なり前漢初期にはあっただろう。なお司馬遷は「関雎」を、「夫周室衰而關雎作,幽厲微而禮樂壞」と言っているから、早くとも西周末期の成立と思っていたようだ。

だがその後になると、西周第三代康王の時代の作とされるようになり、また慎み深い婦人の徳を意味する、と解されるようになった。

「樂而不淫」については、『春秋左氏伝』魯襄公二十九年(BC623)条に、呉の公子李札が魯国を訪れた際の発言として記載がある。宴会でヒンの民謡を歌ったところ、「美哉,蕩乎,樂而不淫,其周公之東乎」”よろしいですな。人を感動させる歌です。楽しい曲ですがのめり込ませる手前で止まって控えめです。これはきっと周公の作でしょう”。

「哀而不傷」については、前漢の劉向『列女伝』に南宋になってからつけ加えられた『続列女伝』班婕妤篇6が再出。『漢書』では暗君成帝を諌める賢女として記されるだけだが、宋儒の作文では成帝の跡を追って殉死したことになっているが多分ウソ。wikipediaを参照

結局論語の本章は、関雎の歌共々でっち上げなのだが、真に受けて現在演奏されている音楽に罪があるわけではない。

https://hayaron.kyukyodo.work/syokai/hatiitu/060.html



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