我が乗騎・メイト君(YAMAHA タウンメイトT-90)が陋宅に来てから、17年と4ヶ月になる。世間では新聞や郵便配達でよく使われていた馬で、買い物など近所周りには最高の足となる。また旅の馬としても優秀で、四国などあちこちをこの馬で旅して回った。

だがすでに旧車と言うべき車齢で、燃料系もキャブレターという、機械的な霧吹きが用いられ、現在一般的なコンピュータ制御の噴射ポンプ(インジェクション)ではない。機械ゆえに、機嫌を損ねると駄々をこねるが、機械ゆえに、素人が手入れする余地があったりもする。
ただここしばらく乗らない日が続き、機嫌を損ねてしまったらしく、エンジンがまことにかかりにくい。かかったと思ったらアイドリング中に止まってしまいもする。旧車ゆえにキックスタートしか付いていないから、炎天下、蹴り千本ノックをはぁはぁ息を切らせながらするはめに。
それでもどうにもならんから、いったん諦めて陋宅に入り、バイク屋に修理を頼むしかない、カネかかるなぁと扇風機で汗を乾かしながら覚悟した。だが近所の店に電話を掛けても全然出ない。これはいよいよ困ったな、と落ち込んでいたが、ふと思い立って再度馬小屋に出向く。
どうも燃料パイプ系が怪しいのではないか、とフィルタを外しシリンジを当てて空気抜きをする。勢いよくガソリンが出るのを確かめてから元に戻したら、あっけなくエンジンが掛かり安定して回り始めた。やれやれ、と騎乗し買い物に出向く。

大山鳴動して鼠一匹、という言葉が頭を巡った。長年連れ添った夫婦でも、相手のことがわからないように、鉄の馬もまた分からない事だらけで、いつでも新たな発見があるのだねえ。

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